船橋市の財政運営は大丈夫なのか?

財政は数字に凝縮された住民の運命である

社会学では、この見出しのような定義があります。まさに、健全な財政が維持されなくては、住民の生活に深刻な影響を与えることになります。令和2年12月21日に閉会した第4回定例会の一般質問で、私は海老川上流地区の土地区画整理事業に絡めて船橋市の財政見通しについて質疑を行いました。というのは、近い将来、市は財政を維持できなくなる恐れがあると考えているからです。

市は、南部・北部清掃工場の建替え、三番瀬環境学習館の建設、運動公園プールの全面改修等の大型事業に加え、小・中学校の耐震化工事を集中的に進めたことから建設事業費が大幅にふくらみ、その原資となった市債の残高(一般会計)も平成21~30年度の10年間で1,126億円から1,801億円へと674億円増加。これに伴い、公債費(市債の元利償還金)も平成30年度決算額で132億円に達し、今後大きく増加する見通しです。大災害など臨時の支出に備えるための貯えである財源調整基金は、平成25年度(決算ベースで226億円)以降減り続け、令和元年度には111億円、令和2年度には予算ベースで73億円となっています。また、少子高齢化による労働人口の減少により市税収入は伸び悩み、一方で扶助費(生活保護、児童福祉、高齢者福祉等のために支出する経費)は増え続けることが予想されます。

このような財政状況の悪化に対応するため、市は平成31~令和2年度の2年間を行財政改革の集中取り組み期間として定め、業務改善による事務の効率化、指定管理者制度の推進をはじめとする民間活力の活用、公共施設の使用料改訂や公共施設駐車場の有料化をはじめとする受益者負担の見直し等に取り組んできました。しかし、その一方で、市は以下の表のような一連の大型事業を計画しているのです。

事業内容 実施時期 予算(概算)
海老川上流地区土地区画整理事業への
助成金・関連事業費
令和3年度以降 約56億円
児童相談所開設 令和7年度 約16億円
東葉高速線新駅建設
(海老川上流地区)
令和8年度 約50億円
市立医療センター移転建替え 令和8年度 約437億円
消防本庁舎建替え 未定 未定

海老川上流地区土地区画整理事業の問題点

海老川上流地区の土地区画整理事業は、移転建替えが行われる医療センターを中心に健康と医療をテーマとした新たなまちづくりを進める、いわゆる「メディカルタウン構想」と一体となって計画されているものですが、事業そのものは「組合土地区画整理事業」といって土地の所有権者(または借地権者)が土地区画整理組合を設立して進める方法がとられています。この場合、市の役割は組合設立までの事務局運営や助成金の支出など補助的なもので、事業の主体は地権者が担います。現段階(令和3年1月)では、一部の地権者からなる組合設立準備委員会と業務代行予定者に指定された株式会社フジタが事業を進めており、令和3年3月までに全地権者(約200名)の90%以上の同意が得られれば、正式に組合が設立されることになります。

ここでひとつ、大きな問題があります。医療センターの移転建替え予定地は土地区画整理事業地内にあるため、土地区画整理事業が頓挫してしまうと、医療センターの建替えも新たな候補地探しから始めなくてはなりません。そのため、メディカルタウン構想の一環として誘致を計画していた東葉高速鉄道の新駅(飯山満~東海神間)の建設は、行財政改革による見直しにより一度は優先事業から外され、令和8年から14年に延期されましたが、新駅ができないと保留地(土地区画整理事業費を工面するため地権者が少しずつ供出する土地)を目標額で売却できなくなるとの理由から、優先事業に復活させざるを得なくなりました。この新駅は市の請願駅であるため、建設費(見積額約50億)は全額を市が負担しなくてはなりません。土地区画整理事業は地権者を主体とする民間の事業であるにもかかわらず、市としては医療センターの移転建替えのために何としても事業を進めなくてはならず、そのために、財政的リスクを冒してまで、新駅を6年前倒しして建設しなくてはならない状況に追い込まれているというのが現状です。

今後の財政の見通しは?

以上が、船橋市の財政が置かれている状況です。それでは、今後の見通しはどうなっているか。私の一般質問に対する答弁を以下に抜粋します。
◆新型コロナウイルス禍により、感染拡大防止に向けた経済活動の自粛で人や物の移動が突然止まったため、企業部門のみならず家計部門も大きな打撃を受けており、地方交付税(国が国税として徴収し、一定の基準によって地方に再配分する財源)の原資となる国税4税(所得税、法人税、酒税、消費税)や地方税は、リーマンショック時よりも大きな減収となる見通しである。
◆リーマンショック(平成20年~)の際、市税の基幹税である個人市民税が以前より増収となったのは平成29年度(平成28年中の所得に対する課税)だった。(つまり、税収が回復するまでに8年かかった。)
◆上に紹介した大型事業(海老川上流区域土地区画整理事業に伴う市費の支出、児童相談所の開設、市立医療センターの移転・建て替えおよび東葉高速鉄道新駅の建設)を計画どおり進めた場合、公債費は今年度の166億円(予算額)から、令和9年度に180億円を超え、令和12年度にはピークの190億円を超える。(消防本庁舎の建て替えに伴う公債費の増額は、事業費が未定のためここに含まれていません。)
◆市立医療センターの移転・建て替えに伴い、病院事業会計への繰出金は現在の20億円(今年度予算額)から令和9年および10年には30億円を超える。

2018年に閣議決定された骨太方針2018では、一般財源の総額については2018年の水準を維持するとされていますが、このルールの適用は令和3年度までとすることが明記されています。令和4年度以降は、いまと同じ交付税措置がなされる保証はないということです。新型コロナウイルスによる後遺症が、リーマンショックのときと同程度続くと仮定するなら、今後8年程度、令和10年ごろまでは税収が回復しないということになります。ICT化の推進やGIGAスクール構想により導入する機器やシステムの維持管理費用も馬鹿になりません。財政面だけ考えると、これから先、好材料はひとつもないといって良いでしょう。

そんな中、ここで取り上げた土地区画整理事業や建設事業が予定どおり進められれば、公債費と病院事業への操出金だけで、令和9年度と10年度にはいまよりも30億円以上支出が増えることになります。加えて、児童相談所が開設されると、年間の維持管理費用は約16億円と市は見積もっています。この費用は交付税措置されるはずだと市は主張していますが、その保証はありません。今後、税収減と歳出増により財源不足が継続的に発生し、新たな建設事業によって、その不足額がさらに拡大していくのではないか。また、財源調整基金が縮小を続け、大災害等が起こった際に臨時に支出できる財源が確保できなくなるのではないか。そんな危惧をぬぐうことはできません。

財政推計に基づいた意思決定を

都市区画整理事業は、今年3月、地権者の90%以上の同意が得られると一気に動き出します。土地区画整理組合が設立され、9月には、区画整理にかかる市負担、医療センター建替え工事設計委託、新駅建設の市負担の3つがセットの予算案が提出される見込みとのことです。しかし、その時点で、議会が事業の適否を判断していては手遅れです。なぜなら、予算案に異議を唱えることは、それまで進められてきた土地区画整理事業も医療センターの建替えもご破算にすることを意味するからです。

そこで私は、税収の長期的落ち込みや、コロナ禍の影響による地方財源不足を想定した将来財政推計を作成し、一連の事業への投資によるリスクを明らかにしたうえで、再度検討すべきではないかと問い質しました。これに対する市長の答弁は、「地方財政制度は非常に複雑で、合理的な長期シナリオをつくるのは非常に難しい。庁内では慎重論を含め様々な意見があったが、最終的には私が市政の最高責任者として、この事業はいまやっておかなければいけないという判断をした」といった主旨のものでした。

私は、新駅の前倒し建設はさておき、医療センターの建替えも市児相の開設も必要であると考えています。しかし、財政推計を行いリスクを確認した上でなければ、市民生活に大きな影響を及ぼすような事業には着手すべきではありません。そうでなければ、財政運営は場当たり的にならざるを得ず、十分な市民サービスを提供できなくなる危険性すらあるからです。■