新型コロナウイルス濃厚接触者のPCR検査について

5月22日に開会した本年第2回定例会は、昨日(6月10日)閉会しました。

定例会初日に、市長から上程議案の説明とコロナウイルス関連の施策に関する行政報告があり、この両方に関する質疑が28日と29日に行われました。私は28日に質疑に立ち、行政報告については、PCR検査を実施する基準を取り上げました。船橋市では国の基準に従い、クラスター化を防ぐため施設利用者・職員等に検査を実施しているのを除くと、濃厚接触者といえども無症状の方には検査を実施していません。しかし、感染拡大の第2波を防ぐためには、濃厚接触者を対象とした全数検査を実施すべきです。このことを、質疑を通じて訴えました。以下に質疑の内容を掲載します。

問 ある市民の方から、新型コロナウイルス検査で陽性と判定され、同居の家族がいて明らかに濃厚接触者なので、検査を受けさせてほしいと要望したが断られたという話をうかがった。そこでまず聞くが、濃厚接触者の検査をこれまで行わなかった理由と、検査を要望した市民には検査を行わない理由をどのように説明したのか。

答 保健所理事(以下同じ) 濃厚接触者に対するPCR検査のあり方について、国は、咳や熱など新型コロナウイルスへの感染の疑い症状がある場合に検査を実施することとしており、本市においてもPCR検査については、この基準に沿って実施している。しかし、濃厚接触者の体調を把握しておくことは重要であると考えており、濃厚接触者の該当者には陽性患者との最終接触日から14日間の健康観察機関を設け、保健所の保健師が電話で体調の確認を行うとともに、その間に体調に異変が起こったときは直ちに保健所に連絡をいただき、保健所医師の判断のもと、PCR検査を行うこととしている。

問 ご本人が体調の異変を自覚しなければ、あるいは、無症状であればPCR検査は行わないということである。無症状の病原体保有者はこれまで何例も報告されている。北総育成園でも、陽性者のうちかなり多くが無症状であったという報告があった。潜伏期間でも無症状でも、感染性はあるのだという指摘もなされている。となると、症状の有無を検査実施の目安とする限り、無症状の病原体保有者による感染のリスクをなくすことはできない。私は、今後陽性者が出た場合、せめてその人の濃厚接触者だけでも検査を実施すべきと考えるが、感染が疑われる症状がある場合に限り、医師の判断により検査を実施するという方針は、いまでも変わらないのか?

答 現在、国においてPCR検査拡大のため、唾液による検査導入の検討、民間の衛生検査書の活用など体制を拡充させるとともに、無症状者でも医師の判断により、PCR検査について保険請求できるという考え方が示されており、市においても帰国者・接触者外来等での医療機関において、保険診療でPCR検査を実施できる体制の検討を行っている。今後、保険診療でのPCR検査の態勢が拡大していけば、無症状感染者による感染防止の一助になると考えている。濃厚接触者に対する検査の考え方も併せて示されれば、市としても検討していきたい。

問 確かに、5月15日に、厚生労働省より、無症状者に対しても医師の判断で保険診療の中でPCR検査が実施可能であるという見解が示された。ただしこれは、「無症状の患者に手術等を実施した場合、その患者が陽性であったときに重症化のリスクが高く、医療従事者への感染リスクもあるため、麻酔手術を行う前のPCR検査を保険適用してほしい」という医療現場からの要望に応えるもので、一般に検査の保険適用を認めたものではない。この点は、唾液検査が導入された後も変わらないと思われる。 当市ではこのところ、陽性者ゼロが続いており、検査数も5月18日から24日までの一週間で136人。一日あたりの平均にすると約20人である。いまの態勢での検査可能人数は90人と聞いているから、一日あたりの余力が70人分あることになる。濃厚接触者が見つかった場合、全数検査を行うことは十分可能だと思う。そのような状況でも、無症状の人は検査をしないという方針を変えない理由がわからない。その根拠を説明してほしい。

答 保健所では、国から示された疑い例の定義に当てはまる方、インフラ関係の職業の方およびクラスター化を防ぐため施設利用者・職員等については、積極的にPCR検査を実施している。しかしながら、議員ご指摘の症状のない方を検査することで、無症状感染者を発見できることとなると思う。そのために、どういった手法でできるか、物的、人的体制も考える必要があるので、調査研究していきたい。

問 感染拡大が沈静化しつつあるいま、なすべきことは、いわゆる第2波の出来を抑え込むことであることに異論はないと思う。緊急事態宣言が解除となり、当市でも徐々に公共施設の利用が再開され、飲食店の営業時間も拡大していくことになると思われる。人々も少しずつ以前の日常を取り戻し、映画館やライブハウスにも足を運ぶようになるだろう。そんな中、引き合いに出して申し訳ないが、北九州市のような事態を避けるには、感染再拡大のリスクの芽を可能な限り摘んでいくことが必要であろうし、そのために、万が一陽性の方が再び出た場合には、せめて感染の可能性が高い濃厚接触者だけでも、無症状でも検査を実施できるよう方針転換をすることが必要ではないかと申しあげている。先ほど申しあげたように、保険診療での検査が可能になるといっても、治療完遂のために手術前に検査が必要と医師が判断した場合に限られている。今後、唾液検査が可能になれば、例えば咳や熱などの軽い風邪の症状だけでも医師の判断で保険診療による検査ができるようになるかもしれないが、さすがに無症状の人にまで対象が広げられるとは思えない。となると、行政検査しか受け皿は考えられない。先ほど来、国の基準、国の考え方とおっしゃっているが、地方分権が進む中、自治体独自の感染防止策を講じることに問題があるとは思えない。以上申しあげた点について、繰り返しになるが、見解を求める。

答 濃厚接触者を対象に行政検査を実施していくべきとの質問であるが、これまでもお答えしているとおり、感染している可能性が高い濃厚接触者への行政検査については、必要に応じ現在も実施している。
しかしながら、症状が出ていない濃厚接触者の検査についても、クラスター化や感染経路不明な感染を防止するという観点では重要であると考えていることから、国の動向を注視しつつ、今後の方針を検討していきたい。(質疑以上)

船橋市の陽性者は6月3日まで23日間連続でゼロを記録し、一時は市内の入院・治療中の方もゼロとなりましたが、6月4日と6日に1名、8日に3名、9日と10日には2名の方の感染が確認されています。検査態勢、軽症・無症状者の収容施設に余裕のあるいまのうちに、無症状でも濃厚接触者には検査を実施し、少しでも感染拡大の芽を摘む努力をするべきです。