ペット可の特養に行ってきました

img_00628月2日、横須賀市の特別養護老人ホーム「さくらの里山科」を視察してきました。有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅であれば、船橋市内でもペットとともに入居できる施設はいくつかありますが、特養ホームでペット可なのは、全国的にも私が知る限りここだけです。

「さくらの里山科」は4階建てで、居住フロアとなっている2~4階のうち2階がペットとの同居フロアとなっています。施設長の若山三千彦さんに案内していただきました。

この施設は個室ユニット型を採用しており、10部屋の個室とリビング&ダイニングにあたる共用部がひとつのユニットとなっていて、2階は犬ユニットと猫ユニットに分かれています。どちらのユニットも扉の開け閉めは厳重に管理されており、その間にあるエレベーターもフェンスを開かないと乗れないので、他の階の入居者が犬や猫と接触することはありません。

 

所長の若山三千彦さん

所長の若山三千彦さん

私がうかがったとき、入居者の皆さんは共用部でテレビを観たり自室で休んだり思い思いに過ごす時間で、犬たちは数頭が熱烈歓迎してくれました。猫たちはタワーの上で眠っている子、入居者の足元でじっとこちらをうかがっている子など、気ままに過ごしています。

 

 

 

 

 

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この施設には現在、犬が7頭、猫が9頭いますが、実はそのうち飼い主とともに入居してきたのは、犬1頭、猫4頭だけです。他の犬と猫は、福島で震災後に保護された子、保護団体が殺処分寸前に保健所から引き取った子などで、高齢や病気のために里親がみつかりにくい子を優先して引き取っているとのことでした。とはいっても、どの子が飼い主とともに入居した子か見分けはつきません。中には、外から引き取られて、ひとりの入居者にすっかりなついている子もいるそうです。

 

 

 

img_0057高齢者と動物というとアニマルセラピーという言葉が思い浮かびますが、当初からそれを目的としていたわけではないと施設長の若山さん。ただ結果として「動物をなでたりだっこしたりすることで運動機能が回復したり、家族のこともわからなくなるほど認知症が進んでいた方が、動物の名前を覚えることで記憶力を回復できたりといった効果はありました。」また、介護業界はいま人材不足が問題になっていますが、「さくらの里山科」の動物ユニットは、動物好きのスタッフが集まってくるので人手には困っていないとのことです。

 

 

 

img_0050動物の餌やり、トイレの掃除、犬の散歩や運動などは、スタッフの皆さんが担当していますが、そのための時間は当然のことながら介護報酬の対象とはなりません。その分の人件費や餌代、動物の予防接種や治療費など管理にかかる費用は施設の持ち出しとなって経営を圧迫しています。「入居者の生活の質を上げる努力をしている特養は、多かれ少なかれ持ち出しをしています」と若山さんは言います。

そもそも、若山さんがペット可の特養を開設しようと思い立ったのは、介護サービスの仕事に携わる中で、介護が必要になってペットの世話ができなくなり泣く泣く手放さざるを得なくなった高齢者や、飼い主が急逝して行き場を失った動物を数多く見てきたからだそうです。私も議員になる以前から、「動物を飼いたいのだが、自分の将来に自信が持てないからあきらめている」というお年寄りの声をよく耳にしました。

「さくらの里山科」を運営する社会福祉法人心の会では、「あきらめない福祉」を標榜しています。好きなものを食べたい、旅行に行きたい、趣味に打ち込みたい―そうした様々な楽しみの多くを、施設に入る人はあきらめないといけない。動物とともに暮らすこともそのひとつです。そんな介護制度の現状を変えることが、入居者の生活の質を上げることなのだと若山さんは言います。しかし、そのためには、施設は持ち出しをせざるを得ず、少なからぬ負担を強いられます。

さくらの里山科では飼い主が亡くなった後も終生、動物の面倒をみてくれる。写真は私がうかがう直前に亡くなったタロウくんの遺影。

さくらの里山科では飼い主が亡くなった後も終生、動物の面倒をみてくれる。写真は私がうかがう直前に亡くなったタロウくんの遺影。

行政は補助の対象となる施設とそこで働く人に、介護に専念することを求めます。施設のスタッフが動物の面倒をみることに良い顔はしません。確かに、財政が悪化する中、できる限り多くの高齢者に最低限の生活を保障することを優先したい行政の事情もわかります。しかし、伴侶動物(コンパニオン・アニマル)という言葉のとおり、多くの人にとって動物は単なるペットではなく、家族同様の存在です。その伴侶と引き離されることがどれほど辛いことか。「さくらの里山科」の入所案内に書かれているとおり、「ペットを救うことは人を救うこと」なのです。

簡単に答を出せる問題ではありませんが、動物を飼っている、あるいは飼うことを望んでいる高齢者のことと、動物による福祉は、これからの議員活動の主要なテーマのひとつとして、取り組んでいきたいと思っています。